水陸両用艇「ヤドカリ」
先日、工房で作った「ヤドカリ」の実車が、近所の河原で操艇訓練しているという、情報を得ましたので、仕事をサボって早速見に行きました。到着した時は休憩時とあって、近くに寄ってみる事が出来ました。
「ヤドカリ」は水上、陸上の両方で走行出来る水陸両用艇で、正式名称は「外輪式小型特務艇」と云います。名称の最後に「艇」の字が付く事から、区分上は船です。なので、これを操作するには小型船舶免許と特殊自動車免許の両方が必要です。
定員は艇長、操舵手、機関士の3名。機関士は操舵手の足下に潜り込んで、機関操作しますので、相当窮屈だそうです。絵の中で背伸びしているのが、その機関士。操舵室から顔を覗かせているのが操舵手。艇長は下船して、訓練幹部と打ち合わせの最中らしく、ここには居ません。
彼らは、この地区の水上警備隊だそうで、主に河川での警備活動と、災害救助活動を行っているそうです。特に水難救助では、この「ヤドカリ」は重宝されてるそうで、この艇も人命救助の実績があるそうな。
「ヤドカリ」の動力は、永久駒形動力を2基使用。永久駒形動力とは、複雑怪奇な数式と呪文がビッシリと書き込まれた駒を、回転させて得る動力です。それぞれ前後の車軸の中央に一基ずつ、装備されてます。機関士はこの数式と呪文を効率良く組み合わせて、最大出力を得る操作をせねばならず、頭を使う仕事です。

水上走行では、4つの外輪の帷子(かたびら)が、水を掻き分けて進みます。最高で時速4ノット(約7km)くらいだそうです。陸上では30km以上出るそうですが、普段は20kmの巡航速度だそうな。あんまり速く走ると、複雑な外輪が悲鳴を上げて、壊れてしまう。
「ヤドカリ」は元々、海軍の陸戦隊用に設計された水陸両用艇でした。母船によって運ばれ、海上や河川から直接上陸し、地形偵察や部隊間の連絡等に使われたそうです。特に内陸部での部隊連絡などでは、河川周辺の泥濘地や湿地等に悩まされる、陸軍の自動貨車を尻目に、機動性を発揮したそうです。
軍の装備とは云え、その任務上、武装は多くを必要とされず、船首デッキ上に7.7㍉機関銃用の銃架が一基と、個人装備の小銃が装備された程度です。
装備改変とともに、「ヤドカリ」は各所に配備転換されたり、処分されたりしたそうです。元々生産数の少ない艇ですが、今ではこれも含めて、5台程しか運用されてないようです。

ちなみに、操舵手が顔を覗かせてるところからも、解るように、この操舵室には屋根がありません。こんな所は、元々が実用本意の軍用艇らしいですね。「雨の日はどうするのか?」って機関士に質問した所、当たり前のように「合羽を着ます」と、答えてくれました。そりゃあ、そうだ。じゃあ炎天下ではどうするのか?って、しつこく質問しましたら、「我慢する」んだそうです。・・・仕事とは云え、ご苦労な事です。
艇長が居ない間に、総舵手さんのご好意で乗り込ませて貰いました。見た目以上に狭いですね。雨ざらしの操舵室は、構造も至ってシンプル。操船は水陸共に、正面の小さな舵輪を回して方向操作するそうな。画面下に機関室と機関士の椅子が見えます。陸上走行中は、換気窓を開けて換気出来るそうですが、それでも真夏の走行は、熱気が籠って大変苦しいそうです。停船中は操舵室にも天井カバーを掛けて、保管するそうです。
海軍時代、訓練で内地の泥川を遡上中の「ヤドカリ」の画像です。船首デッキ上に機関銃架が付いており、装備された機関銃(7.7㍉)を機関銃手が構えてますが、銃口に赤い空包アタッチメントの付いている所から、演習中の画像と知れます。機関銃手は定員の他で、陸戦隊の戦闘要員の中から派遣されたそうです。胸に装着しているのは防弾鎧。これと云った防御の無い銃座なので、こんな鎧くらいでは心細かったろうと、思います。この画像では皆、海軍の黒い陸戦服を着てますが、鉄帽は陸軍色のままなのが、ちょっと笑えます。
こうして見ると、ちょっとした横波でも浸水しそうな船体ですので、波の高い日の海上では使えなかったでしょうね。海軍時代は船体を、海軍紺色で塗られてましたが、現在の水上警備隊では、目立ち易いように赤みの強いオレンジで塗られてます。
「ヤドカリ」のレポートは以上です。
他の実車も見学出来れば、ご報告致します。
2009.06.23 記事/ヤマドリ主人



